生物学的製剤

なるほど。

生物学的製剤とは化合物(化学的に合成された物質)とは異なり、生物が産生する蛋白質などを医薬品として利用するものです。予防接種に用いられるワクチン製剤や、インスリンなどのホルモン製剤、血液の凝固因子製剤や免疫グロブリン製剤なども広義の生物学的製剤です。
関節リウマチをはじめとした免疫疾患では主にモノクローナル抗体を治療に用いています。化合物とは異なり、特定の標的以外に反応しないことが特徴で、そのために標的とした分子のみを十分に制御することが可能となりました。このことは分子標的薬であっても化合物では不可能で、どうしても投与量を増やすと不定の副作用が出てしまいます。ところが、例えば腫瘍壊死因子(TNF)を標的とした生物学的製剤は、特に合併症のない若年の関節リウマチ患者さんに十分量を投与した場合には、驚異的に優れた有効性と安全性の高さを発揮します。
当科では2015年3月の調査で関節リウマチ患者さんの43%が寛解(関節リウマチの症状が消失した状態)となっていましたが、生物学的製剤は関節リウマチ患者さんの34%に投与されていました。TNFを標的とした製剤以外に、インターロイキン-6を標的とした製剤、リンパ球の活性化を抑制する製剤もあり、患者さんの合併症を含めた病状全体を考慮して治療薬を選択しています。
薬剤費は自己負担額が3割でも年間で約30~50万円かかることが最大の難点です。そのために関節リウマチ患者さんの多くは、まず比較的安価な化合物を1〜3種類用いて病状のコントロールを試みて、それで十分にコントロールされず、生物学的製剤の適応がある患者さんに限って、生物学的製剤をお勧めしています。それが3人に1人の使用に限定されている大きな理由です。自己負担がほとんどない「治験」に参加して生物学的製剤の投与を受けて寛解している患者さんもいます。当科では生物学的製剤の「治験」に数多く参加して、新薬の開発にも尽力しています。