入院中に「自己免疫性肝炎」の疑い
自己免疫性肝炎の疑いも捨てきれないらしいです。
来週、消肝内科に一時、転科して生検を行います。
針をさして肝臓の細胞を採るそうです。
1.概要
自己免疫性肝炎は、肝細胞障害の成立に自己免疫機序が関与していると考えられる慢性に経過する肝炎であり、中年以降の女性に好発することが特徴である。原則的には既知の肝炎ウイルス、アルコール、薬物による肝障害、及び他の自己免疫疾患に基づく肝障害は除外される。また、治療に際し免疫抑制剤、特にコルチコステロイドが著効を奏す。一方、最近の調査により、急性肝炎様に発症する症例の存在が明らかとなっている。発症年齢は60歳を中心とする一峰性を示し、多くは中年以降の発症であり、最近高齢
化がみられる。男女比は約1:6で女性に多い。
2.原因
自己免疫性肝炎の病因は解明されていないが、日本人では60%の症例でHLA-DR4陽性、欧米ではHLA-DR3とHLA-DR4陽性例が多いことから何らかの遺伝的素因が関与していると思われる。
また、ウイルス感染(A型肝炎ウイルス、Epstein-Barrウイルス、サイトメガロウイルス、麻疹ウイルス)や一部の薬剤が自己免疫性肝炎発症の誘因として報告されている。
3.症状
我が国では初発症状としては、倦怠感が60%と最も多く、黄疸(35%)、食思不振(27%)がこれに次ぐ。またウイルス性慢性肝炎では通常ない関節痛、発熱を初発とするものがそれぞれ約15%にみられる。また、合併する他の自己免疫疾患による症状を初発症状とするものもある。自己免疫疾患あるいは膠原病の合併はおよそ1/3の症例でみられ、合併頻度の高いものとしては慢性甲状腺炎(9%程度)、シェーグレン症候群(7%程度)、関節リウマチ(3%程度)がある。身体症候としては、他のウイルス性慢性肝炎、肝硬変と異なることはない。
4.治療法
治療目標は血清トランスアミナーゼ(AST〔GOT〕、ALT〔GPT〕)の持続正常化である。第一選択薬はプレドニゾロンである。血清トランスアミナーゼとIgGの改善を指標にする。ステロイドパルス療法による予後改善効果については、現時点では不明である。一方、急性肝不全(劇症肝炎・遅発性肝不全)例にステロイドパルス療法を行う際には、感染症(特に真菌感染)に対する十分な注意が必要である。2年間以上血清トランスアミナーゼとIgGが正常内で推移すれば、プレドニゾロンの中止も検討可能である。しかし、血清トランスアミナーゼやIgGが持続的に正常化していない症例では、治療中止により高率に再燃がみられる。治療を中止した症例の80%で再燃がみられ、60%の症例は1年以内に再燃するため、治療中止後も十分な経過観察が必要である。初回のプレドニゾロン治療に良好に反応した症例の多くでは、再燃時においてもプレドニゾロンの増量により血清トランスアミナーゼの正常化を得ることができる。副腎皮質ステロイド治療にもかかわらず再燃を繰り返す症例や副腎皮質ステロイドが使用できない症例では、免疫抑制剤アザチオプリンの使用が有効である。アザチオプリン投与時には、血液障害(汎血球減少、貧血、無顆粒球症、血小板減少)、感染症、肝障害などに注意が必要である。プレドニゾロン漸減時や軽度の再燃時には、ウルソデオキシコール酸を併用することで血清トランスアミナーゼの持続正常化を得られる場合がある。自己免疫性肝炎による急性肝不全(劇症肝炎・遅発性肝不全)例の予後は不良であり、肝移植を視野に入れた治療方針の決定が必要である。
5.予後
適切な治療が継続的に行われた自己免疫性肝炎症例の予後は、概ね良好であり、生存期間についても一般人口と差を認めない。しかし、適切な治療が行われないと、他の慢性肝疾患に比べて早期に肝硬変・肝不全へと進行する。予後を良好に保つためには血清トランスアミナーゼの持続正常化が重要であり、繰り返す再燃は予後不良(肝不全、肝癌)につながる。
○ 要件の判定に必要な事項
1.患者数(研究班による)
約10,000人
2.発病の機構
不明(自己免疫的機序の関与が示唆される。)
3.効果的な治療方法
未確立(根本的治療法なし。)
4.長期の療養
必要(適切な治療が行われないと、早期に肝硬変・肝不全へと進行する。)
5.診断基準
あり(「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班 自己免疫性肝炎分科会の診断基準等)
6.重症度分類
自己免疫性肝炎診療ガイドライン(2013年)重症度判定の中等症以上、
または組織学的あるいは臨床的に肝硬変と診断される症例を医療費助成の対象とする。